おひさまクラブで二十年

2000年1月30日発行 中田学童保育所20周年記念誌「おひさまくらぶ」より

おひさまクラブで二十年

堀江 恵理子

 一父母として、学童保育つくりの運動に関わって、たまたま保母の仕事を求職中だったので、指導員を引き受けました。

 始めてみるとわからないことだらけ。小学生らしい遊びってなんだろう。どうすれば少ない人数の子どもでもいきいき過ごせるだろう。大人が子どものあそびを指導するっていいことなのかしら。迷い出したらきりがなくて、先輩の指導員をつかまえては、質問ぜめ。本もたくさん読みました。今でこそ、学童保育の指導員のための本は、たくさんありますが、あの頃は、役立ちそうな本を自分で探すしかなかったので、保育の専門書、発達心理学の入門書、教師の学級経営の本、あそびの学校の本、なんでも読んで、試行錯誤する。つまり、こんなあそびはどうだろう、あの行事が楽しそうだから、やってみよう、こんな話し合いもと、どんどん取り入れて、楽しかったことは、毎年やるようになっていったのが、はじめの10年だったと思います。

 たとえばエスケン、キックベースなどのあそびは、はじめ、「わかんないから、やりたくない」という子どもたちに「覚えれば、絶対楽しいからやろうよ」と教え込むところから始まりました。体をぶつけあって、作戦を練って楽しむ、それがわかってくると、いつの間にか、子どもたちのあそびのレパートリーの一つとして、次の世代へも伝承されるようになりました。竹馬もいいけど、竹を手に入れるのが大変。札幌や名古屋の学童保育でもやっているヤットコというあそびはどうだろうと、角材を買ってきて作り始めたら、こどもたちは、鉋(かんな)をかけるという作業に目を輝かせて、自分たちで作りたがるようになりました。そして、ヤットコでも、コマでも、教えたこと以上に、自分たちで、あそびを広げ、わざを作り出していきました。

 その中でJ・C(ジュニアコーチ)の高学年(4年生以上)が果たしてきた役割も大きなものがあります。あんなふうに何でもできたらいいなとチビたちが憧 れる部分を持っている年の近いおにいちゃん、おねえちゃんがそばにいると言う事が、一番自然な形での子どもの意欲、成長の力となっていくのです。
 J・Cの子どもたちにとっても、頼られる、必要とされていると感じることが、もっとも自然な大人への成長につながっていると思うのです。

 もうひとつ、忘れてはならないおひさまの歴史は、子どもたちが障害児と常に共に成長してきたと言う事です。
 はじめの年から、2人、多いときは4人いたときがありました。入ったばかりの一年生は、変な子と思っても、毎日いっしょに暮らすから、「こういう子もいていいんだ」と自然に納得し、そして、どんなふうにつきあえばいいかを学んでいきます。行事の時、「あの子の役割は?」「どこまでいっしょにやれる」「こういうことは、わたしより上手だよ」と班長さんが話し合う。「どこの班で見てあげるのが、あの子に一番いい?」と班替えを相談する。そういう積み重ねの中で、ただ弱い者としてかばうのではない、仲間としての関わりが育ち、そして、自分もまた、弱い部分を持っていいのだと納得しているのではないでしょうか。障害を持った子たちにとって楽しいと言う事は、すべての子どもにとって楽しいにつながる。それが共に暮らすということだと思います。

 十周年からの、この十年はもう一歩進んで、「行事が楽しい」から「子どもも大人も、みんながいるから楽しい」が目標だったように思います。父母会活動も活発になり、キャンプの意義についてもずいぶん話し合って、みんなが楽しむには、どんな工夫が大切か、試行錯誤の繰り返し。そして、日常的な生活の中でも、「子どもが多すぎて大変なのをどうする」とJ・C会議、班長会議で、こんなふうにしたらいいんじゃないかと自由おやつの日をはじめたり、当番活動のやり方を変えてみたり、まさに、まったく同じ事をやってた年はなかったといっていいです。そして、そういう、その時、その時の子どもたちの状況に合わせて、話し合い、やってみるという機動性が、学童保育の強み、一人一人を大切にするということの根本だと思います。

 これからの十年は、どうでしょうか。次の時代を作っていく親、指導員、子どもたちに、「いろんなことをやって、いろんなことをがんばった、みんなとやった、いいたいことをいえた、楽しかった、そういう体験をたくさんやったら、人間が大好きな人間になれるんだ、なんでもがんばれる人間になれるんだよ、だから、毎日おいで。そういう学童保育をつくっていこうね。」



 おひさまクラブができたときから指導員としてたくさんの子どもたちと共に過ごしてきたホリセン。30周年もすぎて、今日も元気におひさまクラブを切り盛りしています。
 この文章は、2000年1月発行の20周年記念誌に掲載されたものです。1980年の創立当時の苦労や、その後のおひさまクラブを育ててきた歴史がわかる記録だと思います。
 これからも、親たちと共に、子どもたちを支える学童保育であって欲しいと願い、ここに再録します。

(2012年8月)